
「肺癌を早期に発見するために」
第10回(2021年度)科学賞受賞(350万円)
浜松医科大学医学部外科学第一講座 准教授
船井和仁 氏
私は呼吸器外科医として長年手術による肺癌治療を行ってきました。肺癌手術は開胸手術から胸腔鏡下手術、そして最近ではロボット支援下手術へと確実に進歩しており、それに伴って治療成績も向上しています。しかし局所治療である手術だけでの肺癌の撲滅には限界があります。そこで、私はがん薬物療法専門医の資格を取り全身治療である抗がん剤治療を加えました。近年肺癌の薬物療法では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が次々に発売され目覚ましい進歩を遂げています。しかし肺癌の治療成績はまだまだ満足できるものではありません。早期発見が肺癌を治すための重要なカギであり、早期発見のためのスクリーニング法を確立する研究の重要性を強く感じました。
そこで本研究は侵襲なく採取できる尿を用いて肺癌検出のためのバイオマーカーを探索することからスタートし、現在までに、O-アミノ馬尿酸が肺癌の強力な予測バイオマーカーとなることを発見しました。今後は複数の蛍光尿中代謝物を組み合わせたより精度の高いスクリーニング法の確立に向けて、今回頂いた顕彰金を研究活動経費として使用させていただく予定です。
最後に今回このような名誉ある後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞をいただき、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

