第9回(2020年度)科学賞受賞者:吉田健一氏(ウェルカム・サンガー研究所)

「がん研究に関する研究環境について」

第9回(2020年度)科学賞受賞(350万円)
ウェルカム・サンガー研究所/博士研究員
吉田 健一 氏

私は現在英国でがんの研究を行っていますが、日本との研究環境の違いの一つとして、研究資金の違いがあります。私の研究はCancer research UK(CRUK)というがん研究チャリティ団体から資金を受けていますが、CRUKは政府からの資金援助を受けておらず、一般の寄附金などにより運営されています。CRUKは2019年には4.68億ポンド(約700億円)もの研究支援を行ったとのことです。日本の大学では国からの研究費が大部分を占めていましたので、英国の科学研究の強さの一因ではないかと感じました。私はこの度、後藤喜代子・ポールブルダリ癌基金協会から賞をいただくことができましたが、財団はがん(特に肺がん)の撲滅や煙草による健康被害防止に関わる研究を支援しており、今回評価していただけたことは今後も研究を続けていく上で大変励みになりました。いただいた顕彰金は今後日本国内における研究を共同研究者とともに推進するための活動経費として使用させていただきたいと考えております。がんがなぜ起こるのかを研究することは予防、早期発見、治療などの観点から重要なことですが、まだまだ未解決な点が多いのが現状です。寄附という形で日本のがんの研究をサポートしていただければましたら幸いです。

第9回(2020年度)特別賞受賞者:茶本健司氏(京都大学大学院) 

「がん免疫治療によるがん撲滅を目指して」

第9回(2020年度)特別賞受賞(150万円)
京都大学大学院医学研究科免疫ゲノム医学・特定准教授
茶本 健司 氏

10年前と比べ、がん患者さんの生存率は良くなっています。その理由の一つにPD-1抗体を中心とした「がん免疫治療法」の発展が考えられます。現在ではPD-1抗体を用いたがん免疫治療が最前線の治療法となっており、肺癌領域においても第一選択肢となっております。しかし、それでもまだ奏功率が30-40%程度(併用治療を含む)であり、不応答性患者も多く存在します。完全ながんの撲滅のためには、PD-1抗体治療への不応答性メカニズムの解析や、併用治療の開発、効果予測バイオマーカーの研究等まだまだ多くの研究が必要です。それらのがん研究を動物実験や臨床検体を用いて行うためには非常に多くの研究費が必要であり、現状、主に政府の予算を用いて行うしかありません。しかし、政府の予算は使用目的の制限が非常に厳しく、実際のがん研究に必要なものであっても購入できないものや、患者リクルートのための実費も支払えない場合もあります。後藤喜代子・ポールブルダリ癌基金の顕彰金は非常に自由度が高い上に、使用期限の制限がないため、通常の予算では難しい研究を計画することも可能です。今後、がん研究において必要な時に使用させていただき、実臨床に活かせるようながん研究をさらに発展させていきたいと考えております。

第7回(2018年度)特別賞受賞者:平塚(中村)佐千枝氏(信州大学)

「がん研究に関する研究環境の充実」

第7回(2018年度)特別賞受賞(150万円)
信州大学 平塚(中村)佐千枝 氏

長生きの時代に、がんはとても身近な病気です。そのため、多くの人が自分に起こるかもしれない事として関心を持っています。「がんの研究 って、どんなことをするのですか?」と時々質問もいただきます。がんに打ち勝つためには、がんを深く知ることから始まり、治療方法に結びつくように研究していきます。がんの成り立ちは非常に複雑ですが、医学、理学、工学の連携で、たいへん多くのことが分かってきました。私の場合は、がんの転移の研究をしていますので、患者さんからの組織を調べたり、貴重な動物を使ったりします。昔よりも多方面から調べる必要がでてきて、研究には費用がかかります。国や財団に研究の重要性を知っていただき、研究費のサポートをいただくことも常に必要です。研究によって、かかる費用は違いますが、1年に1000万くらいかかります。期間は10年単位でかかります。研究費がとれない時は研究を縮小し、とれた時は、研究は大きく進みます。国や財団からの研究費は、なくてはならないものですが、使う期間が決まっています。この度の顕彰金は使用期限がなく、このような研究費はたいへん貴重です。なぜならば、研究費がどうしても取れなかったときに、そしてこの研究ができたら大きく前進できる可能性があるときにも、使用できるからです。私はポールブルダリ氏のがん撲滅への思いと応援を特別なものと思っております。顕彰金はお守りとして、ここ1番のときに使わせていただくつもりでおります。

第6回(2017年度)科学賞受賞者:田淵貴大氏(大阪国際がんセンター)

「一人でも多くの命を救うために」

第6回(2017年度)科学賞受賞(350万円)
大阪国際がんセンター 田淵貴大 氏

私は血液内科医としてキャリアをスタートし、現在は公衆衛生学・疫学を専門としてがん研究を実施しています。血液内科の現場ではエビデンスに基づく医療を実践することを学んだ一方、予防医学の実践が不十分だと感じていました。一人でも多くの命を救うためには、病気になってしまった人に対する医療・治療だけでなく、病気にならないように予防することも必要です。がんで死亡する人の39%、肺がんで死亡する人の69%はタバコが原因だとわかっているのです(Katanoda K, et al. J Epidemiol 18; 251-264, 2008)。そこで、私はがん対策のなかでも特にタバコ対策に取り組んできました。あらゆる統計資料を活用し、タバコの値上げや屋内禁煙化などの政策を評価し、研究成果をメディアを通して広く周知しています(研究成果については田淵貴大のresearchmap等WEBサイトを参照のこと)。独自のインターネット調査研究プロジェクトとして、日本の新型タバコ問題に注目したJASTIS(Japan Society and New Tobacco Internet Survey)研究および新型コロナウイルス感染症問題に注目したJACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究を立ち上げ、多くの共同研究者とともにがん対策やタバコ対策も含めた公衆衛生課題を解決するための研究に取り組んでいます(写真:オンラインミーティングの様子)。 タバコ対策などのがん対策研究を多くの研究協力者とともに推進するための活動経費として後藤喜代子・ポールブルダリ癌基金からいただいた顕彰金を使用させていただいています。公衆衛生学や疫学の専門技術を駆使して、データを分析し、対策の効果を評価し、今後のより良い社会や生活のかたちを模索していく所存です。そうして、人々の健康と幸福に貢献したいと考えています。

PAGE TOP