授賞式

第10回(2021年度)「後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞」授賞式 中止のお知らせ

賞 名 第10回(2021年度)後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞
(Kiyoko and Paul Bourdarie-Goto Scientific Prize)
対象者
船井 和仁 殿 (Kazuhito FUNAI, M.D., Ph.D.)
所 属 浜松医科大学医学部外科学第一講座 准教授
Associate professor, First Department of Surgery, Hamamatsu University School of Medicine
対対象論文 尿中蛍光代謝物 Oアミノ馬尿酸は、肺がんの検出に有用なバイオマーカーである
Urinary Fluorescent Metabolite O-Aminohippuric Acid is a Useful Biomarker for Lung Cancer Detection
(Metabolomics、2020 Sep 17;16(10):101. )
選考理由
(中島 淳 諮問委員長)
船井氏らは肺がん患者の尿中o-aminohippuric acidが、正常なボランティアよりも多く存在することを見出しました。尿中にはさまざまな蛍光を発する代謝物が含まれており、船井博士は、がん細胞で発現が増加する代謝物を分光蛍光法でスクリーニングすることに成功した。この研究は、患者さんに侵襲を与えない尿検査による早期肺がん検診への道を開くものであり、貴重な研究であるといえます。
受賞者の声 私は呼吸器外科医として手術による肺癌治療を行ってきました。確かに早期の肺癌に対して手術は非常に有効な手段ですが、術前画像でわからない微小転移や進行肺癌に対する効果は不十分です。そこで、がん薬物療法専門医の資格を取り全身治療である抗がん剤治療を加えました。近年肺癌の薬物療法では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が次々に発売され目覚ましい進歩を遂げていますが、肺癌の治療成績はまだまだ満足できるものではありません。肺癌の治療成績の向上は、いかに早く肺癌を発見できるかにかかっています。そこで本研究は侵襲なく検査できる尿を用い肺癌検出のバイオマーカーを探索することからスタートし、現在までに、O-アミノ馬尿酸が肺癌の強力な予測バイオマーカーとなることを発見しました。今後は複数の蛍光尿中代謝物を組み合わせたより精度の高いバイオマーカーの検索を予定しており、今回頂いた顕彰金を活動経費として使用させていただく予定です。今回はありがとうございました。
賞 名 第10回(2021年度)後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞 特別賞
(Kiyoko and Paul Bourdarie-Goto Scientific Prize-Special Award)
対象者
箱崎 泰貴 殿 (Taiki HAKOZAKI, M.D., )
所 属 がん・感染症センター東京都立駒込病院 呼吸器内科 医員
(Staff Physician, Department of Thoracic Oncology and Respiratory Medicine, Tokyo Metropolitan Cancer and Infectious Diseases Center, Komagome Hospital)
対対象論文 進行非小細胞肺癌患者における腸内細菌叢と 免疫チェックポイント阻害 薬の効果・副作用との関連に関する検討
The Gut Microbiome Associates with Immune Checkpoint Inhibition Outcomes in Patients with Advanced Non-Small Cell Lung Cancer
(Cancer Immunol Res. 2020;8(10):1243-1250.)
選考理由
(中島 淳 諮問委員長)
箱崎氏は非小細胞肺癌に対して免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法を受ける患者の腸内細菌叢の分布の違いを調べ、特定の腸内細菌の多寡によって生命予後に有意差があることを見出しました。腸内細菌叢はヒトの免疫力や自己免疫疾患との関わりが知られているが、がん免疫療法の関連を明らかにしたことは非常に興味深く、今後の肺癌治療の進歩に寄与するものと思われます。
受賞者の声 この度は、名誉ある後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞(特別賞)を頂き、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。腸内細菌叢は、宿主の代謝や免疫系への関与を通して恒常性維持に大きく関わるとされ、種々の疾患の病態形成との関連も指摘されています。がんも例外ではなく、特に腫瘍免疫との関連において、腸内細菌叢が患者の予後へ与える影響について注目が集まっています。本研究は、実地臨床における進行がん患者の腸内細菌叢と免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor: ICI)の効果・有害事象の関連について、本邦で初めて前向き研究によって示したものです。腸内細菌叢の構成には人種差がみられることが指摘されていますが、先行研究はいずれも欧米からの報告であり、日本人ないしアジア人のがん患者における検討を行った点で意義は非常に大きいと考えています。

本研究の発展においては、あるフランス人研究者との出会いがターニングポイントとなりました。がん領域における腸内細菌叢研究の第一人者であるProfessor Laurence Zitvogel(Institute Gustave Roussy: IGR)です。講演のため来日した際に、質疑に参加したことをきっかけに、親身になって私の研究の相談に乗って下さり、感激したことを今でも鮮明に覚えております。IGRへの短期留学の機会も得て、多くの研究者との交流を持つことができました。本研究に関して、自身では方向性をなかなか見出せずにいたため、この出会いがなければ完遂し得なかったと考えております。Professor Zitvogelとの出会いは、がん研究への情熱を高め、確固たるものにした機会であったことは間違いなく、がん研究における日仏交流の成果ともいえる本論文を、後藤喜代子・ポールブルダリ癌基金協会の設立理念とも重ね合わせ、広く知ってもらいたく応募に至った次第です。今後は、様々な病期や治療モダリティとの組み合わせにおいて、腸内細菌叢がどのような役割を果たしているか、より深く探索していく予定です。腸内細菌叢を起点として、がんの病態をより深く探索・解明し、新規治療法の開発へ寄与することを主眼において研究活動を継続していきたいと考えています。

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